ゴーイング・コンサーンの幻想-2 西武鉄道



(「ゴーイング・コンサーンの幻想-1 西武鉄道」より続く)

 以上の計算は、会社の主な資産である鉄道事業固定資産等、合わせて6,705億円をそのままにして計算したものです。これらの資産は、本当にこれだけの値打ちがあるのでしょうか。

 ゴーイング・コンサーンの幻想を取り払うだけでなく、一歩進んで、西武鉄道をどこかのファンドに売却する場合を考えてみましょう。

 負債総額は9,055億円ですので、ファンドが全額引き受けると仮定します。一方、西武鉄道が一年間に稼ぐ金額を計算してみますと、-

 支払利息が141億円程ありますが、これを差し引く前の経常利益をベースに考えることにします。

 経常利益は122億円ですので、これに支払利息の141億円を加えると、263億円になります。いわば税引き前粗経常利益とでもいえるものです。

 実効税率を40%とすれば、税金が105億円となり、税引き後で158億円。

 つまり、9,055億円で購入した会社(西武鉄道)が一年間に稼ぎ出す利益が158億円であるということです。

 利回りを計算してみますと、158億円を9,055億円で割って100を掛けると、1.74%ということになり、利回りとしては極めて低いものであるといえます。収益性が悪いのです。



 次に、ゴーイング・コンサーンの幻想を外した資産の額が8,930億円でしたので、これに合わせて、負債を125億円(=9,055億円-8,930億円)カットしてファンドが8,930億円で買い取るものとして計算してみますと、利回りは、1.77%となり、低いことにさほど変わりがありません。

 仮に、利回りを年2%にして、会社の資産価値を逆算(これを収益還元といいます)してみますと、158億円÷0.02=7,900億円ということになり、債務が1,155億円も大幅に超過してしまいます。

 ここで、利回りを3%、4%、5%、10%として計算してみますと、会社の資産価値はそれぞれ、5,266億円、3,950億円、3,160億円、1,580億円と減少していき、債務免除を要する額はそれぞれ、3,789億円、5,105億円、5,895億円、7,475億円と逆に増大していきます。

 このような分析の結果言えることは何でしょうか。



 それは、鉄道事業固定資産等の資産6,705億円(公表値)の評価が高すぎるのではないかということです。仮にこのままの評価でファンドが引き受けるとしたら、期待利回りは年間でたかだか1.74%にしかならず、通常の場合、投資対象の物件とはなりにくいからです。

 通常のファンドは、年の利回りを最低でも5%は求めるでしょうから、西武鉄道の会社の価値は3,160億円ということになり、この場合、6,000億円弱の債務免除が必要になるでしょう。



 次に、各マスコミが口を揃えて報道している含み益-膨大なものがあるそうですが-を加味して考えてみましょう。

 まず、含み益のありそうな勘定科目を決算書(平成16年3月期)から拾い出してみますと、-

1.鉄道事業用固定資産3,519億円
2.付帯事業用固定資産2,888億円
3.各事業関連固定資産17億円
4.分譲土地建物476億円
5.投資有価証券245億円
7,145億円



の5つの資産項目が考えられます。これは、公表の総資産9,765億円の73.1%に相当します。これ以外の資産項目については、評価減を要するものはあっても含み益のあるものはないようです。

 西武鉄道は鉄道事業をやっている会社ですので、まず金額でも一番大きい1.の鉄道事業用固定資産(以下、鉄道資産)について検討してみます。公表値で3,519億円とされているこの鉄道資産は、会社の資産としてはどのように考えたらいいのでしょうか。資産としてどのように評価することが妥当なのでしょうか。



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 ここで一句。
“この保険よいことずくめで不安だな” -交野、大沼章(毎日新聞:平成16年10月16日号より)



(厚化粧しているのは保険だけ? 会社の決算数字にしても、ごまかしがないからといって安心できません。上場会社の中には、合法的な厚化粧をしているものがかなりあるようですので、優良企業と思われていた会社が、化粧をとってみたらとんでもないオンボロ会社だったりして。)

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