「スケコマシ」考 -その2


広辞苑の説明では納得できませんので、我が家にある一番デッカイ“日本国語大辞典”(小学館)にあたってみました。これには、
“スケコマシ”-「女をものにすることをいう。てきや仲間の隠語。(隠語全集)」
とあり、もともとテキヤ(大道商人)仲間の言葉であったことまでは分かったものの、広辞苑と五十歩百歩で、どうも今ひとつピンときません。
 

 それではと、新明解さんをひいてみたところ、スケコマシはなかったものの、スケ(助)の項目の中にそれらしき説明を見つけることができました。“スケ(助)”-「[やくざ仲間などで]情婦の称。[広義ではカモになる女性を指す]」

 スケ(助)とは、「カモになる女性」のことだというのですね。カモをわざわざカタカナで記し、スケの意味の一つを、自信をもって「カモになる女性」であると言い切っている以上、必ずや自らも「カモ」の意味を説明しているに違いないと考えて、カモの項目をひいてみました。ありましたね。“カモ(鴨)”-「御(ぎょ)しやすい相手や、いいもうけの対象として利用される相手。」

 ここまできて、私のイメージする「スケコマシ」像が明確な言葉として表現できそうになりました。

 つまり、スケコマシのスケとは女性のことで、しかも男に貢いでくれる女性を指すようですし、コマシとは、コマス男のことで、コマスとはやっつけるとか、征服するというほどの意味を持っている俗語であるようです。

 従って、スケコマシとは、女性に身体だけでなく金銭をも貢がせる男、ということになるのでしょう。

 プレイボーイのように、自分から女性に奉仕し、貢ぐイメージもなければ、女たらしのように、美貌を武器にして女性をものにしていくといったイメージもありません。

 風采の上がらない、決して二枚目とはいえないプータローが、ハイソでセレブな女性をゲットして少なからぬ金銭を貢がせる、-これは誰にでもできることではなく、ことの善悪をしばらく措いて考えてみれば、匠(たくみ)の技とでも言えるかもしれません。

 スケコマシS.S氏が一人の女性を伴って私の前に現れたのは、女性の親族の税務相談のためでした。

 当初は、S.S氏がスケコマシで、その女性がスケであることなど知りませんでしたので、余りに不釣り合いな二人に不自然さを覚えただけでした。

 その後この二人と何回か会い、またS.S氏を紹介してくれた中江滋樹氏から詳しい話を聞くに及んで、二人の関係が分かってきました。

 この女性は二十歳半ば過ぎの独身で、日本の名門といわれる一族の後継者でした。祖父は、政治の世界で大臣までやった著名な人物で、ある金融機関の創設に携わり、長い間そこの代表をつとめ、その代表の座はその女性の父にバトンタッチされていました。

 祖父はまた、現在は世界的な会社になっている有名企業の創立者の一人で、大株主でもありました。

 その女性は、美人とは言えないまでも十人並の器量で、決して資産家のパープリンなどではなく、かなりのインテリジェンスの持ち主でした。

 この女性は、S.S氏の3人のスケの一人で、彼女がどれだけのものを貢いだのかは分かりません。おそらくは億単位のものであったろうと思われます。

 S.S氏は、軽薄とか浅薄という言葉で形容するしかないような人物でしたが、どこか憎めないキャラクターを持っていました。今、彼が元気であれば、五十歳半ば位でしょう。どこで、どのような暮らしをしているのか興味がありますね。

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ここで一句。
“名の通り秘密あるから秘湯なの”-長野、小言居士(毎日新聞:平成16年9月3日号より)



(天下の秘湯、白骨温泉が入浴剤を入れていたことから大騒ぎになりました。スケコマシにも、入浴剤ならぬ秘技といったものでもあるんでしょうね。) 

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