前代未聞の猿芝居―㉕

本稿の24回目(「前代未聞の猿芝居-㉔」)を書き終えてから、突然脳裡に閃(ひらめ)いたことがある。

前回の後尾に16通の証拠書類(検甲1.~3.、検甲7.~19.)を列挙し、それぞれの作成年月日を示した。
16通の証拠書類のうち14通については、本件犯則(脱税)事実を立証する最重要証拠であることから、すでに本稿の最初(「前代未聞の猿芝居-②」)に列挙して検討している。

このたび新たに追加した2通の証拠書類

・検甲18. 社長夫人勘定(仮勘定)調査書
・検甲19. 専務夫人勘定(仮勘定)調査書

は、本件犯罪事実(犯則事実)を立証する上で直接的な証拠ではない。訴因の要(かなめ)である逋脱(ほだつ)所得金額(検甲7)と脱税額(検甲1.2.)を資金の流れ(キャッシュ・フロー)から説明する補強証拠である。A社が所得をごまかして脱税したお金が、どのようになっているか、その資金の流れを追跡したものだ。

これまで筆者は、これら2通の証拠書類は「訴因」に直接関係する証拠ではないことから、十分な検討をしなかった。
ところが、これらの証拠は、A社が起訴されてから後に行われた松江税務署による調査結果の説明と密接に関連していることに思い至ったのである(「前代未聞の猿芝居-⑱」)。
松江税務署の掛内典生統括官が、社長夫人と専務夫人による脱税金の使い込み(横領)について、

「役員賞与認定」(社外流出)ではなく、
「役員仮払金認定」(社内留保)

にしたと説明したことを思い起こしたのである。山持昌之主査と刺客・伊藤秀之税理士による“バナナの叩売り”(「前代未聞の猿芝居-⑱」)の一環である。

筆者は、“バナナの叩売り”の結果が、刑事法廷に提出された証拠書類とどのように関係しているかを解明するために、検甲18号証と検甲19号証を新たに追加して検討することにした。

その結果、この二つの証拠書類は、本件“猿芝居”の欺瞞性を凝縮したシロモノであることが判明。
「冤罪を証明する定理(山根定理)」を援用しなくとも、本件刑事裁判が冤罪(えんざい。無実の罪とこと。)を裁いていることをズバリ正面から証明する証拠であることが判明した。
あるいはまた、「違法収集証拠排除法則(「前代未聞の猿芝居-㉔」)を用いて、検察官が有罪を立証しようとしている証拠の証拠能力を否定しなくとも、この二つの証拠書類は、本件“猿芝居”がデタラメであることを雄弁に物語る。

何故そうであるのか?何故、検察官が犯則事実(脱税)を証明するために法廷に提出した検甲18号証と検甲19号証の2つの書証が、査察官と検察官のインチキを暴き、彼らの墓穴を掘らしめるようなものであるのか?
以下、説明を加えていく。

  1.  まず、各期末の社長夫人勘定と専務夫人勘定の残高は次の通りである。
    科目 平成28年 1月期 平成29年 1月期 合計 備考
    1.社長夫人勘定残高 69,344,320円 66,241,458円 135,585,778円 検甲18号証
    2.専務夫人勘定残高 17,831,439円 20,122,486円 32,953,925円 検甲19号証

    ここに示されている「社長夫人勘定」と「専務夫人勘定」という勘定科目は、A社の正規の帳簿書類にはない勘定科目であり、査察官が創作した借方の仮勘定である。この「仮勘定」というのは、検甲18号証、検甲19号証にはない言葉であり、筆者が説明のために付け加えたものである。

  2.  上記1.の仮勘定を計算するために、調査表なるものが添付されている。それぞれの調査表の要約は次の通りである。***(A) 社長夫人勘定調査表(検甲18号証)(要約) 単位千円

    財産

    科目 平成28年1月31日現在 平成29年1月31日現在
    1.預貯金 9,690 12,386
    2.マンション手付金等 4,005 4,505
    3.借入金 △11,000 △7,483
    4.財産合計 2,694 9,407
    5.前年度末財産合計 △7,330 2,694
    6.財産増減額 (4.~5.) 10,025 6,712
    7.処分可能所得 (収支の12.) △59,319 △59,528
    8.社長夫人勘定 (6.-7.) 69,344 66,241

    収支

    科目 平成28年1月期 平成29年1月期
    1.役員報酬 9,372 9,320
    2.ブランド品売却収入 672 0
    3.その他収入 461 6,327
    4.収入合計 (1.~3.の合計) 10,507 15,647
    5.百貨店 40,561 45,618
    6.信販 10,348 11,618
    7.きもの屋 3,645 0
    8.地代家賃 2,672 4,054
    9.学費 2,271 2,856
    10.その他支出 10,329 11,030
    11.支出合計 (5.~10.の合計) 69,826 75,176
    12.処分可能所得 (4.-11.) △59,319 △59,528

    ***(B) 専務夫人勘定調査表(検甲18号証)(要約) 単位千円

    財産

    科目 平成28年1月31日現在 平成29年1月31日現在
    1.預貯金 2,091 3,909
    2.貸付金 3,730 2,650
    3.その他 1,481 3,591
    4.借入金 △19,762 △20,521
    5.財産合計 △12,460 △10,371
    6.前年度末財産合計 △12,166 △12,460
    7.財産増減額 (5.-6.) △294 2,089
    8.処分可能所得 (収支の13.) △18,125 △18,033
    9.専務夫人勘定 (7.-8.) 17,831 20,122

    収支

    科目 平成28年1月期 平成29年1月期
    1.役員報酬 9,115 9,089
    2.年金収入 1,322 1,509
    3.ブランド品売却収入 0 382
    4.その他 6,009 93
    5.収入合計 16,446 11,073
    6.百貨店 16,113 17,344
    7.クレジットカード 4,264 4,673
    8.信販 2,559 2,130
    9.呉服店 732 851
    10.現金支出 1,909 1,193
    11.その他 2,995 2,915
    12.支出合計 28,572 29,106
    13.処分可能所得 △18,125 △18,033

    上記は、検甲18号証に添付されている「社長夫人勘定調査表」及び「専務夫人勘定調査表」をもとに、筆者が手を加えて分かり易くしたものだ。
    当初、この二つの調査表は一体何なのか理解に苦しんだが、じっと目を凝(こ)らして見つめていると、どうも資金の流れを追ったもの、即ち、キャッシュフロー表の類(たぐい)であることが分かった。
    つまり、社長夫人がA社の脱税資金を、個人的にどのようにいくら使ったのか、その資金の流れを追跡した資金繰り表の類(たぐい)であることが分かったのである。
    このキャッシュフロー表擬(もど)きの計算表は、正規の簿記会計には存在しないものだ。長年にわたって国税局が資金の流れをチョロまかすために使ってきた怪しげな計算表であった。

(この項つづく)

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